【童話】「ド」のぼうけん

 「ド」のぼうけん

 ドンくんは、がくふにすんでいる「ド」のおんぷです。

 がくふには、5ほんのせんがあります。でもドンくんは、5ほんのせんを いえにしているわけではありません。 5ほんのせんのしたにあるみじかいぼうに、すわっています。

「ドー。ドー」

 おもいとびらをあけたようなおとです。

「ぼくは、なんでひくいのだろうドー」

 ドンくんは、このひくいおとにあきていました。となりにいるレのレンさんに

「このぼうをあげるド。たまには、うえにいって、たかーいおとをだしたいから」

といって、ぼうをさしだすと

「だめシ~。あなたは、ドでしょ。そこにいなさ~い、シィ、シィ~」

 うえのほうにすわっているシのシンさんが、オペラかしゅのように、たかいこえをうねらせていいました。

「なんだよ。ちょっとくらい、いいじゃん。」

 ドンくんは、くちをとがらせました。

「あら、レ、レ。ドンくんのドは、レよりひくくて、くらいわ」  

と、レンさんがいうと、

「そうよ。ドはミよりも、ファよりも」

と、ミのミミさんがいい、みんなで

「くらい!」

と、くちをそろえました。

「くらいなんてさ。じゃぁ、いいよド。うえにいくんじゃなくて、がくふからでるドー!」

 ドンくんは、くろいたまをしたにおして、

   ド、ド、ド、ド、ピョーン

 がくふからとびだしてしまいました。

おんぷのなかまは、ぼうぜんとめをぱちくり。

 ドンくんは、つくえのうえにおちようとおもいました。だけど、かぜがつよくふいてきて、たかくまいあがってしまいました。へやのまどからとびでて、にわのいけにおちてしまいました。

 ポッチャーン!!

「うっわぁぁぁー、ドッドッ、ドーー。」

 みずのなかは、ドンくんとそっくりなおんぷがおよいでいます。

「だれ?だれ?」

 おんぷたちは、しっぽをふりまわしながら、やってきて、ドンくんをかこみました。

「ぼくたちさ、うまれたばかりなんだ」

 いっぴきのくろいおんぷが、くびをクィとよこにまげて、たまごをさしました。

 たまごは、まるいぷるぷるゼリーみたいで、まんなかにくろいものがいます。ドンくんは、そのくろいものとめがあいました。

「ドッド!ギョ、ド!」

 いっしゅんいきをのみました。のどのおくがつまります。でもゼリーたまごのひとつが

「おにいちゃん!!」

 あまえたこえをだしながらでてきて、ドンくんにとびつきました。めがクリクリしていて、かわいいおたまじゃくしです。

 ドンくんはあかちゃんをだきしめて、ツルリとしたあたまをなでてあげました。すると

「おにいちゃん、おにいちゃん!ぼくも」

「わたしにも」

 ほかのおたまじゃくしも あたまをなでてもらおうとよってきました。 

 ドンくんは、おたまじゃくしにかこまれて、うごけなくなりました。けれど、まるくはずんでるえがおに、こころをつかまれて

「ふふふっ、ふふ。でもくるしいドゥー!」

ドンくんはひくいこえでさけびました。

 おたまじゃくしたちは、ドンくんにむちゅうです。どこへいくにも ドンくんのうしろからついていきます。みぎへいけば、みぎ。ひだりへいけば、ひだりへ。おたまじゃくしは、ドンくんをじぶんたちのおにいちゃんだとおもっているようです。

 でも、ドンくんは(ぼくは、おんぷだからおにいちゃんには、なれないよぉ。いいのかなぁ。)とおもいました。

 そのころ、がくふのなかでは、ドンくんがいないのでおおさわぎです。

 ドのおとがないので、うたをうたうことも、ピアノのきょくをえんそうすることもできません。

「ファォゥ、どこにいるのだろう」

ファのファオさんが、まゆをしかめてさけびました。

「おたまじゃくしとくらしてるわ、シ~~」

 シのシンさんがたかいこえでこたえました。みんなは、びっくりして こえをあわせます。

「おたまじゃくしだって?」

「そうよ~。だって、いけから、ドー、ドー

と、ひくいおとと、おたまじゃくしのわらいごえが、いっしょにきこえてくるもの~」

 いけのなかでは

「なぜみずのうえは、キラキラしているの?」

「どうして つりいとはあぶないのかな?」

 おたまじゃくしが、めをビーズのようにひからせて、ドンくんになんでもきいてきます。

「ドッ。むずかしいからあとでおしえるド」

と、こたえて、おたまじくしのおひるねのじかんに、としょかんへいって、いけやかえるについてしらべました。

 本をよんでいくうちに、はっと、いきができないくらいおどろくことがありました。おたまじゃくしは、かえるになることです。

「えっ、ドッ、ドーー」

 ドンくんは、ひっくりかえり、ド、ドンと、おしりのくろいたまがはずんでしまいました。

(そのうちおにいちゃんをできなくなるドゥ。みんながかえるになるまえに、ほんとうのことをはなそうかな。でも、はなせるかな。)

 ドンくんは、ふっといきをはきました。

「あのさ、ほんとうはさ、ぼくはがくふのおんぷなんだドゥ!」

 ゆうきをだして、こえにだしてみました。けれどもおたまじゃくしたちは、

「アッハッハッハッー。なにいってるのー」

とおなかをかかえて、ころげまわります。 

 みんなが あまりにもたのしくわらうので、ドンくんは、なにも いえなくなってしまいました。

 おたまじゃくしたちは、ひごとにかわっていきました。おっぽをフリフリおよいでいたのに、あしがでてきました。きょうだいげんかも、けっとばしあいです。

 ドンくんは(けっとばせないよ)とおもうと、めとはなのおくがツーンといたくなりました。

 まえあしもニョキとでてきました。ドンくんがだっこしてあげようとおもっても、はんたいにギューとつよくだきしめられてしまいました。

 ドンくんは、おおきくなっていくおたまじゃくしをみて、めじりがあつくなりました。まぶしいおたまじゃくしたち。でもおたまじゃくしのニコニコえがおをみると、やっぱり おにいちゃんでいようとおもいました。

 かえるになったおたまじゃくしたちは、キラキラしたよろこびにあふれ、はっぱのうえにすわって、うたをうたいます。

「ゲー、ゲー。かえるのうたが、きこえてくるよ~」

 ドンくんは、わかがえるのうたごえをきくと、なみだが、くろ光りする すりごまのようにポロポロでてきました。あとからあとから目にあふれ、とまりません。

(ぼくは、かえるには、なれない。こっそり、いけからでよう。)

 ドンくんはべんきょうしてきたノートなど、にもつをまとめました。

 わかがえるたちは、はっぱのうえから いけのなかをのぞいてました。ドンくんをみつめています。

「ないている おにいちゃんの かおをみるのは、いやだよ」

「そうだよ。なかないでよ。いかないでよ」

 わかがえるたちは、おたがいのかおをみました。そしてかえるのうたにあわせて、かえうたをうたいはじめました。

「ドー、ドー。かえるの あには、ドのおとだけだ」

 ドー、ドー。ドンくんのからだのなかに、ドのおとがひびきます。ドンくんは

「ありがとう。でも、ぼくはド。おにいちゃんでも、がくふのドなんだよー」

と、おおきなこえでさけびます。

 すると、どこからか

「 レミファミ レ ミファソラソファミ」

 いろんなたかさのおとが、ながれてきました。どこかできいたことのあるメロディです。

「 レミファミ レ ミファソラソファミ」

これはこれは、かえるのうたです。でもドのおとのない かえるのうたです。

 おとのするほうをみてみると、おんぷたちが、ピョーン、ピョーンととびながらちかづいてきます。レのレンさんは、ドンくんのくろいぼうをだいじにかかえています。

「ドンくん、きみがいないと、おんがくが できないんだ」

 おんぷたちは、あたまをさげて、うつむいています。レのレンさんはかおをあげ、ドンくんに ぼうをさしだすと、

「ドがあるから、うたができるのよ」

 ドンくんは、くろいぼうを てにとり、うなずきました。

 よるになりました。

 ドンくんは、これからがくふにかえります。でもそのまえに、わかがえるとおんぷたちで、がっしょうをすることにしました。

「ドもレもミも、みんながいるから、うたえるよ~。じぶんのおとで、およごうよ~~」

 かえるとおんぷの こころをあわせた うたごえは、そらたかくたかくまいあがりました。すると、そらのほしたちが、キラッキラッとかがやきました。

 

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